にし阿波観光圏のある徳島県の県道32号線から東祖谷の林道を進んでいくと、眼下の山並みを見下ろす山斜面に、釣井集落が広がってくる。その一角でひときわ目を引くのは、築300年の歴史を持つ茅葺きの一軒家、篪庵(ちいおり tiiori)トラスト(徳島県 東祖谷)だ。かつて、日本を愛するひとりのアメリカ人が、東祖谷にやってきた。日本各地を旅したという東洋文化研究者、アレックス・カーだ。アレックス・カーは、初めて徳島県 東祖谷に訪れたとき、その「日本の原風景」ともいえる景観に心を寄せ、徳島県 東祖谷に定住することを決める。そして、当初、廃墟であった築300年の茅葺きの古民家を、昭和48年(1973年)に購入し、苦節の末、再生することに成功した。アレックス・カーは、その茅葺き屋根を持つ古民家を「篪庵(ちいおり/tiiori)」と名づける。「ち」は、竹の笛を意味し、「庵」は、草屋根の小屋を意味した。

Tiiori
茅葺き屋根を持つ篪庵(ちいおり/tiiori)トラスト(徳島県)の建物の中は、まさしく現代の世とは別空間だ。太い梁、黒光りする床、あたたかい囲炉裏・・。その昔ながらの和の風景は、にし阿波観光圏の風景を象徴するようで心に響く趣がある。ユニークなのは、篪庵(ちいおり/tiiori)トラスト(徳島県 東祖谷)では、徳島県の旬の味覚を詰め込んだ「平家弁当」を味わえるほか、宿泊体験もできるようになったことだ(それぞれ要予約)。「徳島県の奥地で昔の日本を体験できる」という噂は口づてで広がり、現在では、篪庵(ちいおり/tiiori)トラスト(徳島県 東祖谷)には、観光客が県外や海外からからも訪れるようになった。平家の落人たちが棲んだとされる、にし阿波観光圏の山懐に抱かれた、徳島県 東祖谷。茅葺き屋根の民家で、囲炉裏を囲みながら、地元でとれた山菜や川魚をいただくひととき。格別であるに違いない。
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徳島県の西部に位置する祖谷、大歩危など「にし阿波観光圏」の周囲には四国山地が連なり、豊かな自然が多く残されている。

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祖谷や大歩危・小歩危などがある「にし阿波観光圏」の一帯は、渓谷に沿って断崖絶壁がつづくなど、四国のなかでも厳しい自然に囲まれている地域だ。そんな「にし阿波観光圏」では、児啼爺(こなきじじい)をはじめとする妖怪伝説も代々伝わってきた。一見すると不気味に思える妖怪たち。しかし、そこにはあたたかい物語とミステリアスな魅力が秘められている。

井上晴雄 絵画作品集